(株)澤野建築研究所
澤野 眞一

日本の建物でそれぞれの部屋の格式を表す一番の見どころは天井です。
壁や床は機能的な制約によって多くが決まってきますが、天井は床や壁に比べ、機能がありません。
そのためか天井の高さやデザインでその部屋の格式を決める恰好の場としてデザインされてきました。

典型的な例は、城郭建築で見ることができます。
折上げ天井や格天井、その両方の組み合わせの天井です。

数寄屋建築のお茶室においては、お茶を点てる人、お客様、その二つの間にある、折上げ天井というように、3畳ほどの部屋であるにもかかわらず3種類の高さや仕上げの変化を、通常付けます。

 

天井の高さを2.4mと決めたのは誰が、いつからでしょうか?

マンションやハウスメーカーの住宅は、天井の高さが2.4mと決まっているようです。
これより低いと欠陥のある部屋のように表現する人が時々います、逆にこれより高いと立派な部屋という風潮があります。

実は、部屋の気持ち良さ、居心地の良さの大きな要素は実は天井の高さが大きなファクターを占めています。

例えば、お茶室の天井の高さは平均すると2.2m程度ほどです。
また格式の高い天井の高さの部屋は2.7m、いわゆる9尺天井が最低のようです。2.4mの高さの天井はあまり見受けられません。
天井の高さはその部屋の使い方によって高さを決めていくのが素直な計画なのです。

 

住宅でもそれぞれの部屋は機能(使い方)が決まっています。
座っていることの多い部屋、デスクワークをする部屋、ベッドで寝る部屋、布団で寝る部屋、落ち着いて食事をする部屋、くつろぐ部屋などなど。

本来はこれらの部屋には、違った天井の高さが求められるはずですが、何故かハウスメーカーやマンションメーカーは2.4mです。

 

昭和の文豪、志賀直哉氏の旧宅が奈良の春日大社の近くにあります。
この住宅は志賀直哉氏が自分で設計し、京都からご指名の大工さんを呼んで相談しながら建てた住宅です。
格式や形式にとらわれず自由で素直で合理的な発想で設計されたこの住宅には同じ天井の高さの部屋はほとんどありません。
3.0mを超える部屋や2.0m以下のお茶室など、とても変化に富んで且つ落ち着いた住宅でした。