(株)アトリエ・ヌック建築事務所
勝見 紀子

進まない災害への備え

地震、台風、洪水…近年、各地で起こる様々な災害が住まいに被害を及ぼし、日常生活に支障をきたしている様子が伝えられています。
災害に備えた住まいを考えておかなくてはならないのですが、それがなかなか進まないのには、人々の意識に理由があるように思われます。
災害報道の度に防災への関心が高まりますが、時間が経つにつれ災害への意識が徐々に薄れていくこと。経験していない人にとって、災害時にどの様な困難が起こるかを、日常生活の中で現実味を持って思い描くのが難しいこと。不安を抱き続けるよりも、無意識のうちに日々の営みの方に重点を置くようになること、が挙げられます。
そこで発想を変え、防災を意識し続けなくても「災害のときに役に立つ、日々の暮らしと住まい」を目指す考え方が生まれました。

フェーズフリー住宅

平常時でも災害時でも安心して心地よく暮らせる住まい。これがフェーズフリー住宅が目指す住まいのあり方です。
フェーズフリーとは、平常時・災害時といった社会概念にとらわれず、適切な生活の質を確保しようとする新しい考え方で、平常時と災害時という二つのフェーズ(社会の状態)の垣根をなくしフリーにすることで、生活の質を確保しようというものです。

災害には強いが、普段の暮らしが窮屈だったり、装備に頼りすぎる住宅は考えものです。意識せずとも「毎日の暮らしそのものが『もしも』の支えになる」。それがフェーズフリー住宅です。

 

開放感のある住まい。視界が外に開かれたつくりは、平常時には四季や天気の移り変わりを感じ、非常時は外の様子から危険を察知しやすくなります

災害対応のサイクルに沿って考える

地震、台風、洪水など、住まいを襲う災害は様々ですが、どのような災害でもその対応にはサイクルがあります。
はじめが災害を予知したり早期警報を受ける段階。次に災害の発生そのもの。次いで被害状況の評価、救助や救出などの災害対応。最終段階が被災後の生活=復旧です。

このそれぞれのフェーズに、住まいが対応する5つの要素、
(1)住まいの状態が見える
(2)邪魔がない
(3)開放感
(4)回遊性
(5)アウトドア
を住宅設計に取り入れることで、「災害に備えなくても対応できる」ようにし、日常の暮らしやすさと、災害時を想定した暮らしをが両立できます。

 

平常時から、災害時→復旧時→平常時へとつながるサイクル。

フェーズフリー住宅の、具体的な提案内容は、次回のコラムでご紹介します。

「いつもの暮らしを、もしもの支えに」を掲げ、フェーズフリー住宅を広くするため、女性建築士が中心となり、NPO法人フェーズフリー建築協会(http://phasefree-a.or.jp/)の活動が行われています。