NPO木の家だいすきの会
代表 鈴木 進

新年を迎え、日頃ぼんやりと思っていたことを少し考えてみることにしました。それは、「変化」の時代ということです。

 木の家だいすきの会が活動を始めたのは法人になる1年前の西暦2000年でしたので、今年で20年目を迎えます。「森に緑を、住まいに木を!」という森林保全をスローガンに、「自然素材の家づくり」「丈夫で長持ちする家づくり」「顔の見える家づくり」の3つの柱を据えて、これに沿って具体的な課題を選び、時間をかけて一つ一つ整えてきました。
3年前から取り組んでいる竣工後の住まいのメンテナンスサポートもそれらの課題の一つで、今年からサービスを提供できるよう準備をしているところです。このメンテナンスサービス事業の稼働で、20年前に据えた3本の柱の要となる事業は概ね稼働することになります。
ところで、3本の柱は換言すれば、家づくりというフェーズで、「自然との共生」「循環型社会」「地域ネットワーク」というテーマを具現化したものです。
この20年前に据えたテーマが、「変化」していると思われる今という時代に、これからも耐えうるものなのだろうか、というのが冒頭述べた問いです。

 私の家族は、毎年、勝沼のワイナリーに出かけ、試飲をしながら、「ああでもない、こうでもない」と言いあい、「これはうまい」と家族みなが一致したワインを探し出し、1年分を仕入れてくるのが恒例の楽しみになっています。毎年、秋の紅葉のシーズンに行くのですが、今年はいろいろな都合で正月に行くことになりました。ワインを飲みながら口もかろやかになり、いつしか住まい談義になったのですが、子供たちと私の住まいに対する考え方の違いに驚かされました。私は60代で、住宅スゴロクは、結婚して賃貸住宅からスタートし、分譲マンションに住み替え、上りは戸建持ち家住宅です。おそらく、同世代の大多数はマンションか戸建かの違いはともかく「持ち家」が落ち着く先であることは変わりないと思います。ところが、私の子供たちは30代に入ったところですが、今、独立して賃貸住宅に住んでいますが、持ち家を取得することは目標にはならない、仮に取得する場合には「いつでも売れる」ものを買うという考えのようです。おそらく、これが若い世代の共通の認識なのでしょう。彼らがこう考えるのは、世代の問題ではなく、終身雇用制度の変化、非正規雇用の一般化、その他の社会構造の変化が立場の弱い若い世代に大きく影響しているからだと思います。社会の変化が認識や行動様式の変化をもたらしていると思います。木の家だいすきの会は、「自らが住むために家をつくる」ことをサポートしてきたわけですが、「売りやすい住宅がほしい」という人たちが増えるような社会がもっと加速化するのかどうか注視をしたいと思います。

 最近、哲学者の内山節氏の一連の著作を拝読させてもらっています。内山節氏は、現在のグローバルな社会は、市場経済、市民社会、国民国家の3つの社会システムから成り立っており、いずれも個人を基礎におくことで共通項を持ち、親和性が高いと言っています。ところが、いろいろな部分できしみが生じてきており、崩壊の瀬戸際に立たされていると危機感をあらわにしています。そして、新しい社会の胎動をローカリズムに見出し、開かれた共同体を提唱しています。
昨年から埼玉県ときがわ町で空き家を活用したまちづくり活動に取り組むため、ときがわ町に移住した若い世代の聞き取り調査をしていますが、脱サラをして有機農業に取り組む人、輸入雑貨を扱いながら民泊を始めようとしている人、脱サラ後、家具づくりの修業を経て家具工房を開いた人、編集の仕事をしながら民泊を始めた人、東京で経営コンサルタントの仕事をしながらときがわ町で起業家育成活動をしている人など、さまざまな人がいます。移住者のコミュニティをつくりながら古くから住む人たちとも程よい関係を保ち、外とのつながりも保っています。現在は、マイナーな存在ですが、このような暮らし方・ライフスタイルを望む若い世代は多いような気がしますので、もしかすると今後これらの人たちがこれからの社会の主流になっていくかもしれません。もし、そうだとすると、これらの人たちの中に新しい社会が求めるシーズが隠されていることでしょ。

 冒頭の問いの答えは簡単には見つかりそうにはありません。
内山節氏の考えが正しければ、現在の社会システムは300年の長い年月をかけてでき、そしてその崩壊過程に入っているわけですので、ゆっくり考える時間はありそうです。