「健康な住まい」に思いをはせる
ベネチアは、中央の大きく蛇行する大運河と路地のような無数の運河がおりなす「水の都」です。ベネチアの特徴をなす運河ですが、運河を管理する行政官は特別な職種で、就任式が18世紀までつづくベネチア共和国の元首によって取り行われました。
その際には「この者の功績を讃えよ、それに相応しい報酬を与えよ、しかし、この地位にふさわしくないとなったら絞首刑に処せ。」と宣言されました。
運河の管理がベネチアの生命線ともいえる重要な仕事であったためです。一見、計画がないように見える運河のかたちは一貫した原理によってつくられていたのです。
それは、恐ろしい伝染病を防ぐため、川の流れと潮の満ち引きを利用して、自然をとりこみながら水が滞留して腐らないよう、常に水の流れをつくりだすよう計画され、改善されてきました。交通手段として使うというのは二次的な目的で、「健康」な街をつくるというのが、ベネチアの都市づくりの原理で、その結果として現在のようなヒューマンスケールの魅力ある街ができたのです。