だいすきだから、つくり続ける。

古民家風リノベーションで仕事と暮らしの質を 高める - クリニックのリノベーション –

埼玉県さいたま市

病院らしからぬ古民家風クリニック

まるでスタイリッシュな古民家カフェのようなクリニックが、埼玉県さいたま市にあります。こちらの「土呂メンタルクリニック」院長の竹林宏さんは、勤務医を経て独立開業するにあたり、当初から「古民家のような空間にしたい」と考えていました。

「いかにも病院らしい無機質な空間は落ち着かなくて(笑)。せっかくの独立なので、自分が長くいても苦じゃない建物にしようと。ただ、新築は予算的に厳しかったので、中古物件をリノベーションすることになりました。そこで大手の工務店に相談してみたのですが、『無垢材を使ったリノベーションは難しい』と否定され、正直落ち込みましたね」
竹林さんにとっては、はじめてのリノベーション。大手工務店の声は絶対的に響きましたが、そのなかで唯一「無垢材を使ったリノベーションできます」と明言したのが、木の家だいすきの会でした。

リノベーション前の建物。一般的な軽量鉄骨造の事務所だった

確かに、リノベーションは既存の建物の構造や特性などを考慮しながら行わなければいけないため、一般的な新築よりは難しい部分があります。しかし、事前にしっかりと建物の状態をリサーチし無垢の木材に対する知識と技術があれば、おおよそのことはできるもの。実際に、木の家だいすきの会では、多くの「木の家リノベ」を手掛けてきています。

「親身に相談に乗ってくれ、私の思い描いているリノベーションができそうだと嬉しくなって。自分でかんたんではありますが、設計図を書いてイメージ写真を渡して、設計者さんといっしょに構想を練り上げていきました」

設計者から提案された空間イメージ。
大きな枠組みはすぐに決まったが、細部のブラッシュアップは最後まで続いた

設計を担当したのは、澤野建築研究所。主宰の澤野眞一さんは、木の家づくりを続けて約35年のベテランです。澤野さんの経験と、竹林さんの夢を両輪に、リノベーションの設計がはじまりました。

“想定外”だったプロフェッショナルの提案

竹林さんの「古民家風」という要望は、具体的に言うと「壁材に漆喰、床材に無垢の板を使い、床と柱を黒く落ち着いた色合いにすること」でした。それを受けて、設計・施工チームは、床はアカマツ、腰壁は杉、壁と天井は珪藻土や卵の殻など5つの天然素材をブレンドした塗り壁を採用。すべて自然素材からなる待合室の内装は、なんとも質感豊かなムードを醸します。無垢材は、埼玉県ときがわ町や飯能市まで足を運び、竹林さん自らセレクト。さらに、壁の左官塗りもご夫妻で行うなど、建物づくりにも積極的に関わりました。

竹林さんがご夫婦で壁を塗った。
もともと自然志向が強いため、こうした作業も楽しめたという

設計チームからの提案も、「古民家風」のコンセプトをさらに加速するものでした。クリニックには立派な梁がもうけられていますが、実はこれ、構造的には「なくてもいいもの」。
「それでも、梁があることでぐっと雰囲気が古民家のようになると澤野さんに言われて。正直、最初はピンときませんでしたが(笑)、実際に梁が入った空間を見たら、一気に風格のようなものがついて。澤野さんのアイデアを受け入れて良かったですね」

さらに、“シンボル”の設置も澤野さんの提案だったとか。
「待合室に、山桜の無垢材を使ったジャイアントテーブルがあるのですが、これは澤野さんが『広い空間にはシンボリックなテーブルがあると映える』ということで採用したもの。患者さんはテーブルの前で大画面に流している映像をみたり本を読んだりして時間を過ごしていますし、私たちも、会議のときなどに使い勝手がいいんです」

設計者・工務店とともに飯能の材木店に行き、
さまざまな樹種の板の中から、シンボルとなるジャイアントテーブルや受付カウンターの板を選んだ

確かに、広い待合室に大きなテーブルがあることで、空間にメリハリが生まれています。こうした家具の提案と制作も一度に行えるのが木の家だいすきの会の特徴のひとつです。

自分にも患者さんにも居心地のいい空間に

クリニックは2018年4月に竣工し、開業。「まったく宣伝を行わなかった」とのことですが、その診断の確かさと温和な人柄もあって、今では多くの患者さんから頼りにされています。その理由の一端には「この空間の魅力もあるかも」と竹林さん。
「勤務医時代、患者さんとの会話で病院の内装の話が出ることは全くありませんでしたが、今は時折『気持ちが癒される空間ですね』『ここにいると落ち着きます』といったご感想をいただくんです。やはり、こうした自然素材に囲まれていると、安らぐ部分があるのかもしれませんね」

患者さんだけではありません。何よりも自分が居心地の良い場所を目指してきた竹林さんにとって、この職場は「自宅よりも落ち着く」。なんと、休日に訪れることもしばしばあるとか。
「私はジャズが大好きなのですが、執務室でウッドスピーカーで大きな音を流しながら、事務作業をして過ごしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。3人の娘もここを気に入っていて、幼いときは一緒に来て勉強していましたね」

住まいでも、職場でも、空間が人に与える影響は大きいもの。「古民家風」という自身の好みを明確に持っていた竹林さんだからこそ、設計・施工チームも巻き込んで細部までこだわり抜いた空間をつくりあげることができ、それが現在の充実につながっていそうです。

土呂メンタルクリニック
https://www.toromental.clinic/

木の家だいすきの会からのコメント

診療後もゆっくり長居してしまいそうなクリニックになりましたね。無垢の木材、リラックス効果だけでなく、心理状態をポジティブにする効果や抗ウイルス効果などがあることも科学的に検証されてきています。無垢の木は、クリニックにも適した内装ですね。

この住まいの施工事例

住まい手の声 一覧に戻る