だいすきだから、究める。

木の家コラム

階段の手すり・・安全にそして楽しく

階段の手すりについて、いくつかの思い出があります。ひとつは、子供がまだ、小学校に入る前の頃、知り合いの建築家が設計した内外コンクリート打ち放しのギャラリーに行ったことがあります。高い天井のホールに打ち放しの階段が壁から片持ちで取り付いていました。後日、その建築家にお会いした時に子供と一緒に行った話をしたら、困った顔で笑いながら子供は連れて行かないでと言われました。手すりの無い階段でした。 階段の機能のひとつが転落の防止です。吹き抜けに設けられた階段だと、落差が大きいのでこれが無いと大変危険です。また、階段は片足ずつ昇降を繰り返すため、体のバランスが不安定になります。そのため、よろけた時に手を掛ける部材として手すりが必要になります。平らな床面とは違い、階段は一段踏み外すと次々に滑り落ちる可能性があります。その時にとっさに握ることが出来なければなりません。加えて、高齢者や障害者などが昇降の際、補助としてしっかり握れることが必須です。

地盤を知る

2011年に発生した東日本大震災では、当初は津波被害が注目されていましたが、時間の経過とともに、各地で崖崩れや液状化など、地盤に起因する建物やインフラへの被害が明らかになりました。このように、地震時には地盤の弱さが大きな問題となります。地盤そのものが崩壊しなくても、軟弱地盤では地震の揺れが増幅されることがあります。住宅を建ててから後悔しないためにも、敷地選びの段階から土地の地盤特性を理解しておくことが重要です。日本の地形は、大きく山地・丘陵地・台地・低地に分けられます。山地や丘陵地、台地は比較的古い地層で構成されており、盛土造成地などを除けば、一般的に良好な地盤とされています。一方、低地は新しい地層で形成されていることが多く、雨水や地下水が集まりやすいため、軟弱で不安定な地盤になりやすい傾向があります。川や池の近く、坂の下、水に関係する文字を含む地名の土地は、低地である場合が多く、注意が必要です。

実家をどうする?

今、大相続時代が始まったと言われています。これは、1947~49年生まれの団塊の世代が、全員後期高齢者(75歳以上)となる2025年問題の一つで、高齢者の医療・介護の需要が急増する社会保障の問題だけでなく、住宅などの相続も急増し、少子化や人口減少の影響も受け様々な問題が増えると予想されています。例えば実家ですが、相続して住み続けられる場合は良いですが、居住しない場合、売却するか、賃貸に出すか、しばらく放置しておくか。住宅の状況によっては、売れない、活用できない、処分できないといった厳しい状況になることも考えられます。私も数年前に実家を兄弟で相続しましたが、相続するとたくさんの不動産屋からDMが届くようになりました。実家を売却しませんか?というチラシです。現在は実家に居住し一部を事務所として使用しているので今すぐに売却する必要はありませんが、今後について色々と考え始めています。私の実家は築50年(一部57年)。20年前に屋根や外装、水廻り等のまとまったリフォームを行い、8年前に介護に伴い部分的に耐震・断熱改修も行いましたが、しばらく手を付けていない屋根と外装の劣化や排水管の不具合についても早めに修繕が必要な状態です。せっかく足場をかけるならサッシもやりかえるか、水廻りも全て取り替えて、耐震・断熱性能もあげておくか、内装や間取りも変えるか、大谷石の塀も崩れそうだし・・。どこまでやるかは、ある程度予算も決めないと判断が難しいですね。

空き家を住み継ぐ -ゲストハウスによる再生

かつては人が住み生活が営まれていた建物も、住み手を失うと人の出入りが途絶え、窓は閉ざされ明かりが灯らなくなります。長い年月をかけて出来上がってきた通りの佇まいも、そこだけ時が止まり、やがては荒んだ印象に。
建物が空き家となる現象は、高齢化・人口減少・相続問題という日本社会の構造的問題の現れなので、一朝一夕に解決するものではありません。人口が頭打ちになってもどんどん新しい家をつくり続け、親の家を住み継がないことが当たり前になった結果の、空き家増加です。空き家となった建物を見てみると、特定空き家と呼ばれる倒壊の危険・衛生上の有害性・景観阻害があり除却が必要とされる建物は一部で、手を入れればまだまだ使える、建物自体の寿命を迎えていない家が大半のように見えます。こういったまだまだ使える建物を、親の家を受け継ぎ暮らす流れ、若い人たちの住まいとして売買される流れ、地域に必要な施設への転用など、あらゆる柔軟な形で生かされていくことこそ、人口減少を迎えてしまった日本社会の成熟した姿に思えます。紹介する2軒の建物は、町中の空き家を改修してゲストハウスに用途を変え、住み継ぎを果たした例です。

住まいのカタチ

ここ数年は新築よりも既存住宅改修や古民家調査の仕事が多くなってきました。昔の住宅と今の住宅の大きな違いは外との繋がり方の違いのように感じています。昔ながらの日本家屋は開口部が大きく、部屋も続き間で襖や障子で区切っていました。
今の住宅は、高気密高断熱化が進んだことで開口部は少なめ小さめとなり、部屋は個室化が進みました。熱の出入り部分を少なく、部屋も区切ることで、熱のコントロールはしやすくなったとは思いますが、空間としてのおおらかさは失われてしまうようで少し残念でもあります。 写真は東京国立博物館にある九条館という建物です。京都にあった九条邸の一部が移築されてきた建物です。外周部に縁側が回り、日中は開け放たれ夜は雨戸で閉じることができます。その内側に襖で仕切られた和室二間の周りをぐるっと廊下が配されていて、和室との間は障子で区切られています。雨戸を閉じると、屋外と和室の間は二重の空間で囲まれることになります。気密という意味では隙間はありますが、和室は二重の空気層で囲まれることで断熱性も考えられていたのかもしれません。また、室内の方の廊下の天井隅には小さな開口部があり、廊下に火鉢を置いた時の煙抜き用の換気口だったとか。

住み慣れた家で、これからも安心して暮らすために

今住んでいる家のことが、ふと気になることはありませんか。
傷みが目立ってきたけれど、まだ住み続けられるのか。地震がきたとき、この家は大丈夫なのか。冬の寒さがこたえる——長年暮らしてきた家への疑問は、意外と多いと思います。しかし、どこに相談すればいいのかわからない、という方も少なくないでしょう。
そんな時は、既存住宅の調査・診断や改修、維持管理などについて知識と経験をもつ専門家に、話を聞いてみることをおすすめします。長く住むほど慣れてしまい、寒さや暑さ、使い勝手の不便さも、日常の中で少しずつ受け入れられていきます。しかし、住まいの調査を行うと、その違和感には理由があることが見えてきます。空気の温度だけでなく、床や壁、天井の表面温度や断熱性能が大きく影響しています。暖房をつけていても足元が冷たいという感覚は、床の断熱性能の低さがそのまま現れているものです。

馬と木材のはなし

今年は「午年(うまどし)」ですが、昔から、馬と林業とは深い関係があります。伐った木材を山から運び出し、その丸太を何本も積んだ荷車を町まで曳いていく、といった風景は、昭和中期までは良く見られました。しかし、機械化によって、ほとんど消えていきました。伐った木材を山から馬を使って運び出す作業を「馬搬」と言います。日本では見られることの少ないこの「馬搬」も、ヨーロッパでは「ホース・ロギング」と呼ばれ、林業や森林整備の重要な作業として位置づけられています。

森林の循環利用と中大規模施設の木造・木質化

SDGsの観点から「伐って、植えて、育てる」という森林の循環利用が大切であることが理解されるようになってきました。熱帯雨林の伐採が環境破壊として問題視されるなかで、20年前は「日本でも木を伐ることは森林破壊になるでしょうか?」という質問に「人工林が多い日本で今必要なことは、伐って植えて育てることです。」と正確に答えられる人は3割程度でした。現在では、この割合は相当高まっていると思います。木の家だいすきの会でも、木材利用促進法の施行後(2010年)にスタートした林野庁技術支援事業の派遣専門家として全国各地の木造・木質化のアドバイスをしてきて約15年経ちました。こうした世の中の意識の高まりもあって、中大規模施設の木造化・木質化のプロジェクトが全国で進められるようになってきたことを実感しています。このように社会的認識が高まるなかで、「専門家である設計者や施行者に求められることは何か?」と考えた時に頭に浮かんだ言葉が、「山を知らない設計者が山をほろぼす」という三井所清典氏(日本建築士会連合会元会長、芝浦工業大学名誉教授)の言葉です。
日本は傾斜のきつい山地で林道の整備も進んでいませんので、運び出すための条件も考慮して使うことが必要となります。立木はまっすぐ見えても微妙に曲がっていますので長尺材の歩留まりは悪くなりがちです。丸太はよく使われる3mないし4mに伐採現場で切断され、土場に運ばれてきます。長尺や径の太い丸太は事前に情報を伝えておかないと入手が難しいし、価格も高くなります。したがって、建築コストを抑えようとすれば、地域で入手可能な木材情報を設計前に把握し、地域の大工さんが取り組みやすい在来軸組み工法で設計することが有力な選択肢になります。ところで、原木市場が担う“選木”機能は森林資源を余すところなく活用する役割を担っています。丸太が全て建築用の製材として使えるわけではなく、杭などの土木用材料、集成材・合板・LVLなどの木質材料の原料、紙の原料、燃やして熱源とするなどの需要があり、それを仲介する機能を担っています。森林資源のカスケード利用を促すため、製材や集成材等の木質材料をどう選択して使うか、地域の事情を把握して設計することも必要です。

断熱や空調 時代の変移と今の家

私が修行した設計事務所は職人の手による家づくりを目指していました。家が新建材と工業化へ向かう時代に対して自然素材や人との関係から生み出される家づくり、モノづくりを大切にしようと。 玄関ドアや窓は建具職人による手造り。木の建具は風格があって味わいが増します。
所長の考えは「高気密高断熱は自然ではない。」「エアコンは無粋だ。」「風の通り道を考え夏はカヤを吊って過ごすといい。」(いっとき事務所でカヤの販売手伝いもしていたくらい)  20年以上前は今ほど暑くなく、断熱や気密も今ほど注目されていませんでした。
しかし今は連日の猛暑に熱帯夜 とてもじゃないけどカヤで快眠は難しいでしょう。断熱と気密への意識が高まると同時に知識や技術もあがりました。世間も性能を求めるようになりました。 住まいは時代を写します。自然の力だけで心地よく過ごすのは難しくなりつつありますし 我慢を良しとする時代でもありません。健康的な住環境を考えると断熱、気密の性能を上げていくこと エアコンなどの設備に頼る事も大切です。
採光や庇といった昔からの知恵も使って出来るだけ省エネにしながら、新しい技術や機械も採用するバランスが求められます。ただし、気をつけたいのが性能と経済性だけにとらわれると住まいがどこか息苦しい。ビニルハウス、冷蔵庫の中のように感じてしまうのでしょうか?それに情緒がないというか。
家づくりをする上でどこか自然を感じられるようにしたい思います。
軸足は自然とともに
天空の城ラピュタで「土から離れては生きられないのよ」という名台詞があります。
家もまた「自然と切り離された住まいは息が詰まるのよ」と感じています。

縁台、縁側そして濡れ縁 が つなぐもの

これほど暑くなかった半世紀以上前の夏休みの思い出です。栃木県足利市内の渡良瀬川の土手の脇に木造平屋の祖⽗⺟の家がありました。小学校の夏休みにはひと月近く泊って、田舎の暮らしをしました。朝の土手の上でのラジオ体操から始まって、川で泳ぎ、河原や原っぱ、桑畑の中を駆けまわって遊びました。夕方の雷に怯えつつ。

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