だいすきだから、究める。

木の家コラム

地域の気候を住まいの設計に落とし込む

今年は、梅雨時ですが東京では最高気温が35℃前後となり暑い日が続きました。日中、現場に行くため外に出ますが、汗が止まらず度々水分補強をしながらでないと暑さで参ってしまいそうになります。同じ時期、暑い町として知られる熊谷市では猛暑日が続き、中には最高気温が38℃近くになる日も出たほどです。気温について書きましたが、暮らす地域により様々な日射量や降水量など気候の違いがあります。これは、日本列島が南北に長く、北は亜寒帯から南は亜熱帯まで様々な気候区分に属しているからです。また、高い山々が連なる山脈があり、冬は日本海側では曇りや雪、雨の日が多く、太平洋側では晴れの日が多くなります。

古くて新しい和室

部屋の名前にはリビングや台所、寝室など部屋の使い道を指す言葉になっていますが、「和室」は見た目の様子を表しています。床が畳敷き、床の間や押入れがあり、建具は襖や障子で出来ているイメージでしょうか。日本の昔の住まいでは、部屋と言えば畳敷きでしたから、どんな用途にも使われていました。現代の生活でもそれは可能ですが、多い使い道としては、座敷=接客のための場、茶の間=家族のくつろぎの場、予備室=客用の寝室、の3通りが考えられます。

ある住宅の変遷 — 末永く使うために

木造2階建ての住宅の38年間の変遷についてです。
38年前の4月、S氏は弟のW氏から提案されて、父親の土地に2世帯住宅を建てることにしました。その時、S氏夫妻は第一子が年末に生まれる予定で、W氏は独身のサラリーマンでした。
北側道路の敷地に設計された住宅は上と下がほとんど同じ間取りで、2階は外階段でのアプローチでした。平面の中央に収納が南北に配置され、東側が玄関から見通せるLDKで、西側が6畳の和室と縁側という構成です。収納を真ん中にして、周囲を一周出来るプランとしたのは、子供達がぐるぐる回って遊べることと来客の際、対応がし易いと考えたからです。

【現場監督コラム】断熱リフォームの現場監督の考え

築32年経った鳩山町のM様邸リフォーム工事で、今年1月の下旬からお世話になりました。在来浴室をUBに交換し、隣の洗面脱衣室も断熱材の改修を行う為に床全てと外壁に面する内壁を解体して工事を行う内容でした。
私も木造建築の仕事を始めてかれこれ28年経ちますが、ほとんどの現場で経験値だけで済んだ事がありません。
やっぱり有りました。お風呂の窓です。既存の浴室サッシが入隅に付いてます。外壁を壊さずに施工する事で打合せをしていたので、このままではユニットバスが納まらない。
いろいろと調べてみたところ良い商品が有りました。某メーカー商品のリプラスサッシを連窓(つなげて)して、ユニットバスの壁裏側になる部分はFIX窓に断熱パネルをはめ込み、浴室内部には縦スベリ窓のみが見えてくる納まりで無事に工事が出来ました。

住みながらできる快適性アップ

今年の冬は寒くならないと思って年初頃でしたが、その後雪も降り、ちゃんと寒い日がやってきました。夏は暑く、冬も寒く、日本の家で快適に過ごすためには暑さ寒さの両方に対応しておけると良いですね。一昨年、寒さを改善したいとYさんからご相談頂きました。まだ築5年ほどとのことだったので、一体どれだけのことができるものかと思いながら現地を確認に伺いました。
平屋で面積は広くないものの窓が大きかったり、窓の数も多かったり、
窓自体の断熱性能や、壁・床・天井に施工されている断熱性能がさほど性能が高いものではなかったり…と状況が分かりました。

中古住宅の調査診断を誰に頼むか?(ワンストップか、第三者性か)

最近、新築ではなく中古住宅を購入してリノベーションするという人が増えています。よほど状態の良い中古住宅であれば別ですが、購入するとなると、劣化状況や耐震性、断熱性などの性能も気になりますよね。国も、空き家対策や中古住宅の流通を活性化させるため様々な施策を講じていて、2016年には宅地建物取引業法の一部が改正され、専門家による既存住宅状況調査(インスペクションと言います)の活用を促すことが義務化されました。依頼者の意向に応じてインスペクション業者のあっせんの可否を示すという少々ややこしい法律で、インスペクションの実施自体は義務化されませんでしたが、通常の不動産取引の場にインスペクションという言葉が登場することになりました。これまでは、築年数や構造、面積や間取りといった基本的な情報のみで中古住宅を売買していましたが、これからは、中古住宅の劣化状況等も専門家が調査してから売買するという、購入者が安心して良質な中古住宅を選ぶことが出来る仕組みづくりが進められています。

誰にも気兼ねなく楽に暮らせる高齢者の住まい あるケース

将来の体の衰えを見据えての住まいや、老親のための住宅改修など、設計でお手伝いする機会は少なくありませんでした。
高齢者にとって移動を安全にすることと介護が受けやすいこと、関係者にとってはお世話がしやすいことが、新築でもリフォームでも考え方の軸になります。1階だけで生活ができること、段差を無くすことを基本にすることがしばしばなのですが…。ここで紹介するのは、86歳と82歳の高齢夫婦、筆者の父母の住まいについてです。
現在、二人が暮らす築22年30坪弱の住宅は、元々次女夫妻が建てた家です。次女夫妻が家を建てて10年が経過した頃、3人の子供たちが大きくなり何かと手狭であるとの話が持ち上がり、父母が住む向かいの45坪住宅と入れ替わり引越しを行っていました。次女夫妻が建てた家30坪住宅は、スキップフロアのつくりで、道路レベルの駐車場階、半階上がってメインフロア、また半階上がって寝室・収納・トイレ、さらに半階上がって子供部屋フロアの構成です。家の内外に4つの階段があり、小上がりまであるという、言ってみればアップダウンの多い家です。父母がここに住み始めた年齢は74歳と70歳。リタイヤしてまだ数年で体の衰えはみられず、二人それぞれの趣味や孫たちのサポートに忙しくしていた頃でした。

不便益という言葉があるのをご存じですか?

京都大学の川上教授という方が「不便だからこそ得られるものもある」と、「不便益」(造語)という考え方を提唱しています。数年前から唱えているそうですが、僕が知ったのは少し前です。 実のところ、言葉以外に深くは知らないのですが、家を設計する際にとても気になっていた「便利さ」。なぜかというと、暮らしに便利さばかりを求める建て主さんに出会ったことがありまして、話を進めていくにつれ、どんどんモチベーションが下がっている自分に気付きました。僕は本来、暮らしに便利さはあまり求めませんし、暮らす家はちょいと田舎で、最寄り駅から歩くこと20分ほどのところにあります。あと5分近ければ楽だなあ?・・とは思いますが、駅近に住みたいとも都会に住みたいとも思ったことはありません。かつて、8年間ほど実家の「離れ」で暮らしていました。こども部屋は母屋の2階にあるため、部屋に行くには離れの2階のベランダ経由で母屋に渡ります。寒くても、一瞬外へ出なければなりませんので、天候によってはちょっと濡れたりすることもありますが、それはそれで子供たちも楽しかったようです。 また、薪ストーブもありましたが、実は全く便利なものではありません。
薪の確保や着火、灰の処分やメンテナンスなど、かなり面倒なものです。大きな堀座卓は、立つ、座るが面倒なうえ穴の掃除も意外と大変です。

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