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木の家コラム

地域の気候を住まいの設計に落とし込む

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今年は、梅雨時ですが東京では最高気温が35℃前後となり暑い日が続きました。

日中、現場に行くため外に出ますが、汗が止まらず度々水分補強をしながらでないと暑さで参ってしまいそうになります。同じ時期、暑い町として知られる熊谷市では猛暑日が続き、中には最高気温が38℃近くになる日も出たほどです。

気温について書きましたが、暮らす地域により様々な日射量や降水量など気候の違いがあります。これは、日本列島が南北に長く、北は亜寒帯から南は亜熱帯まで様々な気候区分に属しているからです。また、高い山々が連なる山脈があり、冬は日本海側では曇りや雪、雨の日が多く、太平洋側では晴れの日が多くなります。

Photo / Tomio Ohashi・Design / Masahito Nagata

そうした地域による気候の違いを把握し、計画に落とし込んでいきます。

写真の物件は、私が事務所に勤めていた時に担当していた住宅です。場所は山梨県の西部で、周囲には果樹園や水田があり、西を向けば北アルプス。東を向けば筑摩山が望める場所です。冬は寒さが厳しく雪が降り積もり、夏は気温が高いという盆地特有の内陸性気候にあたる地域になります。

この住宅は、玄関と洗面脱衣室、浴室が1階。玄関から半階上がった所に居間と食堂、台所。寝室は玄関から下がった半地下にあります。このようなスキップフロアの構成は、周囲の景色が素晴らしく室内から日常的に見える事。積雪がある冬でもお庭仕事などに活用できるベランダを居間と一体的に使えることを考え計画されています。

Photo / Tomio Ohashi・Design / Masahito Nagata

また、この地域は日射量が比較的多い所でしたので、屋根にソーラー設備を設置しています。もちろん効率が上がるよう屋根の向きは南向きにし、勾配にも注意を払っています。

そうすることで夏場は日射熱を利用してお湯をつくり炊事やお風呂。冬場は日射熱によって温められた空気を室内に取り入れ暖房に利用することができます。

Photo / Tomio Ohashi・Design / Masahito Nagata

風の強い地域でもあり、住まい手のご要望から居間の大きな窓に雨戸も設けています。

住まい手に伺うと、この雨戸が夏場にも役立っているようで、朝出るときに雨戸を閉めていくと熱気がこもらず、帰ってきても通風だけで過ごせるそうです。ちなみに居間には将来の設置できるようエアコンの場所と配管を用意しましたが、今のところ設置はしていないとの事です。

東京都市圏では、このような気候はあまり見られませんが、それでも地域や周囲の状況により環境は違います。そうした環境の違いを把握し建物の計画をすることが、心地よい暮らしに繋がっていくのではないでしょうか。

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