だいすきだから、究める。

木の家コラム

北欧の窓辺

公開日: 最終更新日:

北欧の建築家アアルト

先月まで竹中工務店にあるギャラリーにて「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」という展示が行われていました。フィンランドの建築家夫婦として建築だけでなく、円形座面の木製スツールなどで知られる家具やガラス製食器などのデザイナーとしてご存知の方も多いのではないでしょうか。

10年以上前に訪れたフィンランドで見学したアアルトの自邸がAR技術によりダブレットを平面図にかざすと実際に撮った写真からつくられた立体的な家が内部も含めて見ることができたり、壁にかざすと部屋の内部に立った時の景色が画面に映し出されたり、まるでその場にいるような体験ができる仕掛けとなっていました。
当時は立ち入り禁止だった部屋も見ることができ全貌がよく分かりました。フィンランドで見学した中でもとても印象深い建物だったので、実際に訪れた時の感動がよみがえってきました。
特に印象的だったのは窓辺のつくり方でした。

 

窓辺の室礼(しつらい)

日本の住宅で庭に面した窓と言ったら、外と出入りできる掃き出し窓で、床から2m前後ぐらいの高さが多いですが、アアルト自邸のリビング南向きの窓は腰ぐらいの高さから天井までの窓となっており、開けることのできない窓となっています。

その代わりに窓横には庭に出入りできるドアが設けてあります。窓の前は棚が置かれ植栽が並び、その棚の下はラジエーターが設置され、冬場の窓からの冷気を防ぐようになっています。
外壁を覆うツタは窓も覆うほどの勢いで、夏の強い日差しを和らげます。室内はすだれのようなスクリーンが設置され、日射の入り具合を調整することができます。

アアルト自邸のリビング南向きの窓

 

窓が換気・採光のための装置ではなく、空間の室礼としてつくられていました。リビングの先には仕事場であるアトリエがあり、アトリエは2階までの吹抜け空間で窓は高めの位置に大きく設けられています。
アトリエを照らすのに十分な明るさを確保するだけでなく、リビングから見ると高い位置の窓の明るさに目線が誘われるので、空間の広がりを感じることができます。

アアルト自邸 アトリエ

 

窓辺でくつろぐ

アアルト自邸では階段を上がってすぐの場所にもう一つのリビングがありました。
2階には暖炉が設置されていて、暖炉に向かってソファが配置され、ソファの上部には窓、窓下にはやはりラジエーター、ソファの横には本棚などが設置されています。窓辺でくつろぐための装置がバランス良く整えられていて、昼間は明るい窓でくつろぎ、夜は暖炉の灯を眺めながら心穏やかな時間を過ごすことができます。
空間を彩る装置としての窓辺のつくり方がとても印象的な体験でした。

 

この記事を書いた人

木の家コラム 一覧に戻る