だいすきだから、
木の家コラム
住空間に馴染む椅子
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床に座る文化が長かった日本で、椅子が使われるようになったのは明治時代以降のことのようです。そんな日本よりずっと椅子文化が長いヨーロッパの中でも、デンマークのデザイナーに焦点を当てた「フィン・ユールとデンマークの椅子」展が、昨年、東京都美術館開催されました。
フィン・ユール、ボーエ・モーエンセン、アルネ・ヤコブセン、ハンス J . ウェグナー、などなど、デザインに興味のある方ならば、一度は耳にしたことがある名前だと思いますが、全員デンマークの方です。それも、1940年から1960年頃にデザインされた家具が特に有名で、現在でも広く親しまれています。デンマークにはヒュッゲ(Hygge)という言葉があり、「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のことを指すそうですが、日本人がこたつで一家団欒を過ごしたように、デンマークでは暖炉を囲んで椅子に座りくつろいだり、団欒を楽しんだりしたようです。
フィン・ユールの椅子といえば、優雅な曲線と軽やかな構造が特徴的です。脚などに使われている材料自体が細いこともありますが、座面が少し浮いて見えるようなデザインにすることで軽やかさを感じられます。繊細そうに見えて、座ると安心感があり、とても座り心地がよいのです。さらに木製の肘掛は思わず撫でたくなる触り心地のよい滑らかな形状です。家の中に置く椅子は重厚感よりは軽やかさを感じるデザインの方が住空間にも馴染みやすいです。
そんなフィン・ユールの椅子ですが、東京都美術館の1階のラウンジには一人掛けと二人掛けの椅子が設置されています。お近くにお越しの際には是非腰掛けに立ち寄ってみてください。
フィン・ユールの椅子は高価で手が出ませんが、愛着を持って使い続けられる椅子が欲しいと思い、数年前に購入したのが中村好文さんデザインのパウダースツールです。座面はペーパーコードで編んであり、背あてはちょうど腰に当たる高さで、大きくはない椅子ですが、体の収まりがよく、とても座り心地がよいです。見た目にも曲線が効いていて柔らかな印象で、重心低めで安心感のあるデザインです。
目で見て嬉しく、座ってホッとできる椅子がある生活、お勧めです。