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木の家コラム

温熱環境と健康な暮らし

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交通事故を超えるヒートショック死亡者数

日本の浴室での死亡事故者数は、欧米先進国の 10 倍以上で世界的に見ても群を抜いて大きいことをご存じでしょうか。

日本ではヒートショックで亡くなる人は、実に交通事故死亡者数約 4 千人の 3.5 倍に当たる年間 1 万 4 千人に達します。
交通事故の死亡者数は 1970 年に 1 万 7 千人に達し、大きな社会問題となった結果、全国的な交通事故撲滅運動が展開されて 2013 年には約 4 千人にまで減少しました。

ヒートショックによる死亡が国民的課題になるのも時間の問題と言えるでしょう。
ヒートショックの理由としは、「浴槽につかることを好む」うえに「浴室の室温が低いこと」などが大きな理由と言われており、住宅の温熱環境が主要な原因の一つとなっています。

 

やっかいな結露

木の家だいすきの会では、「森の息吹を住まいに!」をスローガンに「グリーンエア工法」の開発に着手しました。
この工法は、「健康な住まい」をテーマに、「住み手」と「住い」の健康を共に追い求めた工法です。

ヒートショックを防止するためには、家全体の断熱性を高めて、従来暖房をしていない浴室や脱衣室も含めて、家の中の温度差を少なくし、身体への負担を取り除くことが有効な手段となります。
しかし、やっかいなことに、断熱性を高めると結露発生のリスクが高まってしまいます。

結露は、冬のガラス窓やサッシに発生する眼に見える結露と壁の内部で発生している眼に見えない結露があります。
前者は、室内におけるカビの発生などを助長し、別の健康問題を誘発します。
壁の内部の結露は腐朽菌の増殖などにより建物の劣化を早め、「住い」の健康を損ないます。

 

結露を防ぎながら、断熱性を高める方法

木と漆喰は共に吸放湿性が高く、梅雨の湿気の高い時期は空気中の湿度を吸ってじめじめ感を緩和し、冬の乾燥した時期には、逆に湿気をはいて室内環境をやわらげます。
この吸放湿性が、木と漆喰の家が気持ち良いと感じる大きな理由です。

断熱性を高めつつ、防露するための標準仕様として防湿気密シートを張る工法が定められていますが、せっかく木と漆喰を使って防湿気密シートを張ったのでは、吸放湿性を減ずることになります。
そこで、健康への良い影響がはっきりわかる水準まで断熱性を確保(Q 値 2 前後を目標)しつつ防湿気密シートを使用しないで防露を達成したものがグリーンエア工法です。

今年の 2 月には、モデル住宅が埼玉県所沢市に建ちました。
現在、温度・湿度を定期的に計測し、半年後には年間の実証データが揃いますので効果のほどを見て頂くことができるでしょう。

 

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