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木の家コラム

木のベットに思いをはせる

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年をとるにつれてわかった睡眠の悩み

写真は2011年の完成見学会のときに撮ったもので、スギの無垢材で作ったベッドです。
建て主の方が特に願って建具屋さんに作ったもらったものでした。私は、この時はまだ還暦前で快眠を謳歌していましたので、あまり気にもとめていませんでした。
この時から10年経ち、歳を重ねるごとに、朝早く眼がさめて睡眠時間が短かくなったり、夜トイレに起きなくてはならなくなったりと、十分に寝られなくなるようになって、あの時の建て主の方の思いが理解できるような気がします。

 

スギの香り成分がリラックス効果を高め、良質な睡眠を促す

「睡眠」をネットで検索してみると、製薬会社の睡眠薬だけでなく、食品メーカーによる睡眠アプリ、就寝前のストレッチの方法、寝間着、部屋の温度や湿度、ベッドやまくらなどの寝具に至るまで「質の良い睡眠」を得るための情報があふれています。

最近、木材の健康効果についても研究が進みはじめ、さまざまな知見が明らかになってきました。
その一つが、スギの香り成分が副交感神経のはたらきを促進してリラックス効果を高め、良質な睡眠を促すという研究で、木の家だいすきの会がご指導頂いている九州大学の清水邦義准教授はこの分野の先駆者です。

一度寝たら一晩中同じ状態で寝ているように感じていますが、睡眠は実は質の異なる2つの睡眠から成ります。
1つは、睡眠中に眼球がすばやく動くことから名付けられたレム睡眠、もう1つは、眼球運動をともなわないノンレム睡眠と呼ばれています。
ノンレム睡眠中大脳は休息状態で、浅い睡眠から深い睡眠まで4段階(S 1〜S4)に分れているそうです。正常な人の睡眠では、ノンレム睡眠に始まり、S1→S2→S3の順にもっとも深い睡眠(S4)まで、いっきに達します。
このノンレム睡眠が1時間半〜2時間ほど続くと、一度睡眠が浅くなり、今度は、最初のレム睡眠が現われてきます。このノンレム睡眠とレム睡眠が1つのセットになり、一晩に4〜5回繰り返すのが睡眠の一般的なパターンとされています。

科学的にもその効果が明らかになり始めた「杉の香り」

清水先生は大学構内に無垢の木材と新建材で建てた実験棟を2棟建設し、健康な男子大学生6名に寝てもらい、睡眠ポリグラフ検査(脳波、心電図、眼球運動の測定)を実施しました。
結果は、レム睡眠の時間は新建材棟の方が長く、睡眠段階3のノンレム睡眠は無垢材棟の方が長いというものでした。
清水先生によれば、スギの香りは人の副交感神経にはたらき、リラックスさせる効果があるため、無垢材棟の睡眠において深い眠りの時間が長くなり、質のよい睡眠を促すということです。

木の家に暮らしていると、木の香りや木の色など実感としてくリラックスできると感じますが、科学的にもその効果が明らかになり始めています。

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