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木の家コラム

ズッキーニのサラダ ~料理と建築~

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■料理のできない人は、建築ができない?!

このコラムを読んでいただく方は、F.L. ライトのお名前をご存知の方も多いかもしれません。
旧帝国ホテルの設計者で、明治村に一部復元されています。 F.L. ライトの建築は何といっても空間の連続性、心地よいプロポーションと素材の使い方ではないでしょうか。

彼の言葉の中に「料理のできない人は、建築ができない」という言葉があると教えられました。
最初に聞いたのは学生時代でしたが、当時は全くその意味が分かりませんでした。
事務所を設立し、本格的な設計活動をしている間に、ふと、F.L. ライトの言葉を思いだしました。

料理は、あるものとあるものを組み合わせて別なものを創る、できたものは、もともとのものと全く違ったものになる。 どれとどれを、どのような分量で組み合わせ、どのように加工してどのように盛り付けるか?素材から完成のイメージができないとおいしく創れません。
これはとても設計の創作活動と似ているのではないかと感じました。

 

■ズッキーニのサラダ

ズッキーニにオリーブオイルとビネガーとペッパーとパルミジャーノチーズをふりかけ、最後にバジルを加えます。
ズッキーニは生のまま薄くスライス、ビネガーはアップルかグレープ、ペッパーはホール物をグラインド、チーズも固形のものを削って振りかけます。
それぞれの分量をちょうどよい分量に組み合わせます。 ひとつひとつの素材は贅沢なものではありませんがペッパーやチーズは粉になったものを使うと味も香りも十分ではなくなってしまいます。

ズッキーニのサラダは素材そのもので、全く違ったものになってはいません。
通常は火を入れた料理になることが多いですが、火を入れた料理とは、また違った料理です。
ズッキーニはスライスの厚さによって食感も味も変わります。 ですからサラダの時は厚さ1.5ミリ程度です。
粉になったペッパーは香りが飛んでしまうと、まるで高温乾燥された木材のように香りがなくなってしまいます。
ズッキーニの厚さ=数値を間違えたときの食感の悪さは、プロポーションが不適切な居心地の悪い空間と似ています。 建築の場合、数値を間違えるととんでもないことになります。

 

 

■料理と建築

建築空間は、適切な素材を適切に加工し適切な分量で組み合わせる。 ですから、完成形のイメージが創れていないと良い建築空間は創れません。
これは料理と同じなのだ、ということがわかりました。 素材選びはとても大切ですが、特に贅沢な食材はありません。
ペッパーは業務用のものをバーゲン時購入すれば香りも味も保てます。 パルミジャーノチーズも同様です。
ズッキーニもバジルもすべて自宅のプランター栽培、建築の素材も地元でとれたものを素直に適切に使うとその土地、風土になじむようです。

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