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木の家コラム

リノベーションの建築 ~建築の寿命~

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山の上ホテルが再開を目指すというニュースをネットやTVに流れました。
かなりうれしい知らせです。
というのも1980年の大改修工事、設計チームの一員として現場で図面を描きつつ設計監理にあたっていました。
もともと山の上ホテルは竣工が1937年(昭和12年)佐藤新興生活館としてオープンしました。その後1954年(昭和29年)故吉田俊男氏が取得して改修工事を行いホテルとしてオープンしました。
さらにその後、時代の流れの中で老朽化した部分と新たな設備の大改修が行われ、1980年再開しました。なんとその時の改修工事費は数十億に上っています。

 

1980年の改修工事前、スーパーゼネコン何社かは建替えを提案しましたが故吉田氏は建替えに納得せずにいたところ、建物を残す改修案を提案した建築家が居ました。
その結果、山の上ホテルはオリジナルの姿を残すことが出来たのです。

 

小さな建物は別として、残される建物の多くは行政がかかわり歴史的な評価を受けた建物がほとんどです。なぜならコストがかかり費用対効果が見込めないからです。

建築はある一定の機能を求めて造られます、そのためその機能が不十分になると壊され建替えられます、しかし山の上ホテル=佐藤新興生活館は機能を変えて残されました、さらにホテルの機能が不十分になりつつある時(~1980年)、よりよく残す道を再び選択しました。

 

世界には機能を変えて生き続けている建物が多々あります、パリのオルセー美術館やロンドンのテートモダン、京都の京セラ美術館など、小さな建物では町家を改修した商業施設などなど‥‥
「機能的な設計です」は設計者の殺し文句のようですが
建物の価値は果たして機能だけなのでしょうか?
機能だけの建物は消費されてしまうのではと。

手元には1980年改修工事後の完了図面を開いています。図面を見ながら、考えさせてくれる山の上ホテルのニュースでした。
写真は1980年改修工事の終わったあとのものです。

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