だいすきだから、究める。

木の家コラム

なぜ「伐採からはじめる家づくり」なのか

新築、リノベーションに関わらず、私たちがお勧めしているのは、「伐採見学からはじめる家づくり」です。
伐採見学会では、先人たちが50年60年以上かけて大切に育ててきた木の命をいただき、大黒柱や梁、床板などに利用される木が伐採されるのを見学します。澄んだ空気の森の中で、何十年もかけて大きくなった木が倒れる時の体の芯まで響く音と振動は、何とも言えず厳かな気持ちにさせてくれます。
立木は伐採されて命を絶たれますが、製材され大工さんによって家の中で第2の命を吹き込まれ、住まい手を見守ります。そんな過程を見て感じていただく。―それは、単に「家を買う」では味わえないことです。

古民家再生にも通じる、バイオリンの話

 子供の頃に習っていて、長いこと中断していたバイオリンのレッスンを、数年前に再開しました。しかし子供時代の覚え方の早さとは比べ物にならず、壁にぶつかる日々です。  バイオリンはすべて木で作られています。 表面は比重が小さく音が伝わりやすい「スプルス」(ドイツトウヒ)、裏面は「メイプル」(カエデ)で、程よく硬く、木目が密できれいなものが使われています。 これらの木材の良し悪しや天然乾燥のさせ方が音の美しさを左右し、楽器の価値が変わります。名器「ストラディバリウス」の材料は、驚くほど均一で密な木目を持っていて、ヨーロッパがかなり寒冷だった時期(14Ⅽ~19Ⅽ半)の木材を使っているのではないか、と言われています。

地域の森の木を使って公共施設をつくろう

私の事務所があるのは、地元である埼玉県飯能市。
面積の約75%もの山林を持ち、江戸時代より「西川材」と呼ばれた木材の産地です。
私の家系は、山や林業に携わっている人はいませんが、せっかく地元が産地なのだから西川材の木の家を推奨しています。
建て主さんや建築地によっては、ときがわの木や、多摩の木を使うこともあります。 木の産地ですから、地元の公共建築物には「西川材」を利用するのが自然な流れですね・・・
コウ設計工房でも、時々小さな公共建物の設計を受け持つことがあります。以前、市の担当職員さんと、入札方式ではなく、プロポーザル方式で発注するのは難しいですか?・・とお話したことがありました。(簡単に説明すると、入札方式とは、設計金額を入札する中で金額により決まり、プロポーザル方式とは、企画提案を選ぶことで、設計者を決めます)
しかしながら、「設計者を決めるまでのプロセスや選定基準などが難しいなあ・・」ということで、今でも入札方式で決まるのが常です。 設計説明書では、「出来る限り西川材を活用した提案を行うこと」と書かれているのですが、我々のような地元の設計事務所が落札するとも限りません。地域材を生かした設計をしたくても、金額提示がうまくいかないと提案すらできないのです。公共施設の設計に手慣れた事務所は、役所が設計費としていくらくらいを想定しているかの見当を付け、最低金額を割らない、ちょうどいい塩梅で入札してきますので、コウ設計工房が受注できるのは、運しかありません。(経験値が低いのですね・・)公共工事の設計費は悪くないので、受注したい案件の場合など、比較的安い金額で入札したりしますが、最低金額より下回る金額だった場合に何度も失格になったことがあります。 数年前に受注した、駅前広場のトイレと山間部の小学校に隣接した学童保育施設では、構造材、内装材共に西川材を生かして実現できました。しかし、市外の設計事務所が設計を担当し、木に対して意識の低い工事会社が受注すると、西川材は少ししか使われないようです。
材木業者さんも嘆いていますが、何もできません。
木を生かす設計者、工事業者、役所の職員と協力してできる体制が出来ればこんなことにはならないのに、癒着だの談合だの騒ぐ人もいるから難しいんですね。

健康空間を生み出す木の特性

コンクリートの飼育箱で飼われたマウスは生長程度が貧弱でかつ短命であり、産まれた子供を噛み殺すといったショッキングな報告があります。
人の場合はそのような激しい症状は起こさないと思われますが、学校における荒んだ子どもたち・校内暴力の背景に、校舎の殺伐とした物理的環境を懸念する声も聞かれます。
そこで、学校における子どもや教師の疲労の様子を鉄筋コンクリート造校舎と木造校舎について比較すると、両者の間に違いのあることが分かります。 図 8 は授業中の子どもの疲労症状を見ています。鉄筋コンクリート造校舎の子ども達は木造校舎に比して眠気やだるさを覚え、注意集中の困難な傾向がより多く見られています。
また、鉄筋コンクリート造校舎では保健室逃避と見られる曖昧な理由での保健室利用が目立っています。

お米と木材、乾燥の大切さは同じ

収穫したてのお米は約 20% の水分を含んでいます。水分が多いとカビなどの原因になるため、乾燥させて約 15%に落とすことが必要ですが、現在は火力を使った機械乾燥が普通です。
かっては稲架(はさ)と呼ばれる横木につるし天日で乾かしており、味がよくなると言われていることから現在でも天日乾燥にこだわる生産者がいます。実際、「炊飯品質では、天日干しは熱風乾燥より食味スコア等の5 項目において品質指標が向上する傾向を示した」と学会報告もあります。

設計者の目
巾はぎ板でつくる家具・造作
無垢使いの可能性を広げた「巾はぎ板」

 巾はぎ板とは集成材の一種で、木材を貼り合わせることで大きな面にした板材です。
一般的な集成材は、小さなブロック片をたて・よこ両方向につなぎ合わせるのに対し、巾はぎ材は 10 ~ 20cm巾の広めの材を、横方向にだけはいだものです。一枚のはぎ板が大きいので、自然な木目が感じられ、より無垢板に近い印象があります。はぐ部分が少ないため、接着剤の使用も抑えられています。無垢板で家具を造る際、巾の広い一枚ものの板を使うのは魅力的ですが、樹齢のいった大木からしか取れないため、量が少なく高価です。
手に入った場合も、巾が広いほど反りや捻じれが強いため、時間をかけた乾燥やクセを抑える加工が必要で、簡単には扱えないのが実情です。巾はぎ材は、柱を取ったあとの端材や、小径木や間伐材などからつくることができ、資源の有効利用になっていること、木表・木裏を交互にはいで反りや捻じれを軽減してあること、必要な長さや巾で製作できるなど、使用しやすい工夫がなされている板材なのです。

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