澤野建築研究所・澤野眞一

長持ちする住宅の一つの方針として国では長期優良住宅制度があります。
長期優良住宅は4 つの基本性能を確保することが求められます。
4つのうちの一つは耐震等級2です。この強度を確保するために通常、床や壁に構造用合板を使います。
また省エネ対策等級4 を確保するためには室内側に防湿気密シート(ビニールシート)を張り、外壁内部の結露を防ぐことが求められます。

私たち、NPO 木の家だいすきの会では無垢の木と自然素材(漆喰仕上げなど)を基本として設計していますので、可能な限り接着剤で固めた合板や石油製品のビニールシートを使った設計はしたくないと考えています。

そこで今回は、長期優良住宅であっても
■構造用合板を始め合板類は使わない、
■ビニールシートを使わず外壁内部結露を防ぐ、
にチャレンジした住宅の設計を行いました。

吹抜や天窓からの光で明るい階段室

断熱材セルロースファイバーを吹き込む様子

耐震強度

壁の強度は筋違いを適切に配置することによって確保しました。
床や屋根の水平強度は杉の無垢板を斜めに、互い違いに全面張り込みました。
外壁の構造は通気層を造り、断熱材は壁内部に満遍なく吹き込める工法を採用し、さらに透湿抵抗計算を行ってビニールシートを張らずに結露防止を確保しました。

省エネ性能

筋違いによる壁の強度を確保する構造の場合、断熱材の施工方法に一考が必要です。吹き込み充填工法は隅々まで断熱材が入り込むため利点があります。また万が一内部に結露を生じた場合であっても一時的に湿気をとどめ、通気層から外部に排出できるようになっています。
 これらの構造及び省エネの計算は、それぞれ専門家の設計者の協力を仰ぎました。外壁内部の状況は、センサーを埋め込み状況がモニターできるようになっています。今後の計測が楽しみです。

(二つ上)複数個所にセンサー埋め込み壁内の温度や湿度を見ることができる。
(上)ネットを介して、スマートフォンでも見ることができるようになっている。

建て主・奥様の目

設計事務所に依頼して家づくりをするのは、初めての体験でした。

設計事務所とのやりとり

間取りを提案していただく前に、設計事務所の所長の澤野さんとスタッフの中嶋さんがいらっしゃって、家具の寸法や納戸の中の荷物を全部記録して帰っていかれたのは印象的でした。
これ以降の設計作業を含めて「設計事務所はこんなことまでやるのね」と、ちょっとした驚きでした。私は素人が変に口出しするよりは専門家に任せておいた方が良いものができるのではないかという考え方ですが、建て主として何か選ぶ必要がある時には、選択肢を整理して頂き適切なアドバイスをもらいながら、結果的に良い選択ができたと思っています。

2階の吹き抜けの窓は、外付けブラインドで夏の日差しはしっかり遮られる

マンションから住み替えて

以前住んでいた家は、分譲マンションで南向きでしたので、冬でも天気の良い昼中には暖房はほとんど必要ありませんでしたが、戸建て住宅に住みかえて、家族全員が「2階は暖かいけれど、1階はやや寒い。」と感じています。
ただ、夏はかなり涼しそうで、夏に弱い私にとっては、適した住まいかもしれません。

お気に入り

建替を検討されているお隣の奥さんがご覧になりたいというので、見ていただきました。「明るい家ですね」と「シュークロークとパントリーはすごく良いですね!」とおっしゃっていました。
住んでみて気に入っている点は、玄関に入ったときの木の香り、風通しの良さ、ダイニングからのデッキ越しの庭の眺め・・・、まだまだ沢山ありますが、このぐらいにしておきます。

太い大黒柱が印象的な、明るいダイニング

家の断熱性能と健康リスクの関係

近畿大学・岩前研究室の約2万人のアンケート調査から、健康への望ましくない状況の発生原因として、
 ●暖房室から非暖房室移動時の温度差による血圧の急激な変化と、
 ●低温空気の吸い込み、皮膚・粘膜の乾燥による免疫力低下
が挙げられています。
住まいの低温をなくす=断熱性能を高い家が、健康の秘訣です。