だいすきだから、究める。

木の家コラム

設計者の目 吹き抜け窓

住まいのつくり様で、すっかり定着してきた吹抜け空間。
一昔前は、見栄えはいいが寒いと敬遠されることが少なくありませんでした。
解放感あふれる雰囲気だけでなく、採光や通風の面で有利なこと、家族空間と上階の個室をつなぐ役目があることなど、吹抜けのよさが広く認知されるようになりました。同時に断熱性能の向上が寒さという欠点を補うようになり、吹抜けは多くの住まいで取り入れられています。
採光や通風を期待しての吹抜けですから、窓が大事な要素になります。光を得るために大きな窓を設けたいところですが、高い位置にあるだけに一般的な高さの窓のようには扱えません。
開閉や清掃には工夫が必要ですし、高窓ゆえにコールドドラフト現象への対策も講じておかなければなりません。実例を挙げて、その工夫と対策をご紹介します。※コールドドラフト現象:冬季、暖かい室内の空気が冷たい窓ガラスに触れて冷やされ、床面に下降する現象 

熊本地震が警鐘を鳴らすものは何か?

 一般の方は違和感を抱くかもしれませんが、建築基準法の耐震基準は、熊本地震のような「大規模な地震動では倒壊・崩壊はしないが、損壊はする」というレベルです。
言い換えれば、「生命の安全は守るが、財産としての住居は壊れてもしかたない」としています。建築基準法だけに頼れないとすれば、どうしたらよいでしょうか。耐震等級3の住宅はほとんど被害がなかったため、熊本では耐震等級3の建物に建て替えを希望する人が大変多いそうです。一方、NHKの報道特集でも取り上げられていたため、ご存知の方も多いと思いますが、「直下率と床などの水平構面の耐力」がバランスよく確保されていれば、必ずしも耐震等級をあげなくても地震に耐える建物が可能です。
直下率とは上下階の柱や耐力壁の位置が重なっている割合です。
上限階で間取りがまったく同じならば直下率は100%となりますが、現実的には無理なため、そこで重要になるのが、上下階の耐力壁の力を伝える床の役割です。本会が中心となって開発を進めてきたGA(グリーンエア)斜め張り工法は、構造用合板を張った床を上回る床倍率を達成しており、間取りの自由度を確保しながら耐震性を高めることが可能になります。

インフルエンザに負けない木の家

冬季にエアコンを使っていて喉を傷めた経験はありませんか。
空気が乾燥すると、口や鼻の粘膜が乾燥して病原菌が体内に入りやすくなります。冬にかぜやインフルエンザにかかりやすくなるのは病原菌が増えるだけでなく、空気の乾燥により人間の防御機能が落ちることも原因と言われています。
インフルエンザウィルスは室内温度による違いはありますが湿度が50%を超えると激減するため、冬季の室内の湿度を40%~60%に保つと良いと言われています。調湿性能の高い建材を室内に使用すれば、冬季の乾燥した時期には建材が放湿し、夏季の蒸し暑い時期には建材が吸湿します。
しかし、大壁工法の家によく使用されているフローリングやビニールクロスでは調湿性能は期待できません。
このため建材メーカーでは、調湿性能を持った建材の開発を進めています。 

「健康な住まい」に思いをはせる

 ベネチアは、中央の大きく蛇行する大運河と路地のような無数の運河がおりなす「水の都」です。ベネチアの特徴をなす運河ですが、運河を管理する行政官は特別な職種で、就任式が18世紀までつづくベネチア共和国の元首によって取り行われました。
その際には「この者の功績を讃えよ、それに相応しい報酬を与えよ、しかし、この地位にふさわしくないとなったら絞首刑に処せ。」と宣言されました。
運河の管理がベネチアの生命線ともいえる重要な仕事であったためです。一見、計画がないように見える運河のかたちは一貫した原理によってつくられていたのです。
それは、恐ろしい伝染病を防ぐため、川の流れと潮の満ち引きを利用して、自然をとりこみながら水が滞留して腐らないよう、常に水の流れをつくりだすよう計画され、改善されてきました。交通手段として使うというのは二次的な目的で、「健康」な街をつくるというのが、ベネチアの都市づくりの原理で、その結果として現在のようなヒューマンスケールの魅力ある街ができたのです。

耐震性能を住まい手が選ぶ時代に!

 熊本から東京に出てきた人が、生まれて初めて地震にあって驚いたと話していました。熊本はそれほど地震のないところだったわけですが、これからは、全国どこでも地震が起こると考える必要があるでしょう。建築基準法は、1986 年新耐震基準が導入、木造住宅については阪神淡路大震災を経て 2000 年 6 月にさらに強化されました。
今回の熊本地震で、専門家の関心は 2000 年 6 月の基準を改正し強化する必要があるかどうか、ということでしたが、国土交通省では検討委員会の調査結果報告をふまえ、「建築基準法改正の必要はない」との結論をつい最近出しました。

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